「AI検索対策」という言葉では、小さすぎる。——デジタルブランディングの再定義に挑む、CINCコンサルティング事業 事業責任者が語るAI時代のマーケターの姿 

CINC
株式会社CINC コンサルティング事業 事業責任者 矢野孝典氏

株式会社CINC コンサルティング事業 事業責任者 矢野 孝典 氏

電通に13年、電通デジタルに3年。そしてマーケターから一転、塾講師として6年。2025年4月、株式会社CINCのコンサルティング事業 事業責任者に就任した矢野孝典氏のキャリアは、一見すると異色に映る。しかし話を聞けば、すべての経験が一本の線で繋がっていることがわかる。「まだ誰も気づいていないポテンシャルに、いち早く挑みたい」——AI検索時代の最前線で、矢野氏が描く戦略と思想を聞いた。

日本最大の広告代理店から、学習塾への転身。遠回りに見えたキャリアがAI検索時代の最前線で武器になった。

——これまでのご経歴を教えてください。

2006年に新卒で電通に入社しました。前半の約7年間はオールドメディアのセールスが中心で、後半の6〜7年はデジタル領域・ダイレクト系の商材へと移っていきました。一貫して営業職です。その流れの中で2016年に設立された電通デジタルに出向し、約3年間所属した後、2019年に退職しました。

その後、少し海外に出たりもしましたが、間もなく帰国して塾講師を始めました。長く続けるつもりはなかったのですが(笑)、気づけばどっぷりはまってしまって、6年程度やり続けました。そして2025年4月からCINCに入社し、今に至ります。

——電通での豊富な経験の後に、なぜ「塾講師」だったのでしょうか。

元々、小学生のときに中学受験のために塾に通っていて、それがとても楽しかった、という原体験があります。そして同時に、「人に教える」「人を動かす」ということへの興味がずっとありました。

電通では長年、マスで多くの人を動かすことをやってきた。でも、個人に向き合って一人ひとりを動かしていく、という経験はまだしていなかった。「一度やってみよう」と退職のタイミングで踏み出したのが、塾講師でした。

塾講師の6年間が、マーケターとしての地力を根底から鍛えられた。

——塾講師の経験は、マーケターとしての力にも繋がっていますか?

はい、かなり大きく繋がっていると思っています。2つの軸で語れます。

一つ目は、定量的な成果へのこだわりが研ぎ澄まされたことです。テストの点数という明確な指標で、毎週のように自分の介入の成否が可視化される。数字で成果が測れるものが、昔から好きだったということが改めてわかりました。

二つ目が、自分の中ではもっと大きい話なんですが、「人を動かす」技術を高められた点です。マーケティングと塾講師という職業は、どちらも「行動変容」を最終アウトプットとして求められるという点で、本質的に同じ職業だと思っています。どうすれば人は動くのか、という思考が、どちらの仕事にも直結している。

そして子供たちは反応が非常にダイレクトです。良くも悪くも素直に出る。さらにテストという定量指標が毎週あるので、定性的にも定量的にもフィードバックが圧倒的に分かりやすい。実は大人も子供も、動く原理はほとんど変わらないんです。電通時代はマスを相手にしていたので、個人の「生の反応」を見る機会がほぼなかった。それを5〜6年間、おそらく日本でも指折りの授業数をこなしながら徹底的に体験できたことは、自分の中で大きな地力になっています。

あと、これは後から知った話なのですが、マーケティングの世界の第一人者として私が尊敬しているメディアクリエイターの佐藤 雅彦さんが(電通出身「ポリンキー」や「ピタゴラスイッチ」などを手がけた方)、「人に教えること」への強い関心を持っていて、教育番組をかなり手がけているんですよね。いかに分かりやすく伝えて人を動かすか、ということと、一人の人間を教えることは、やっぱり深いところで繋がっている。私も感覚的にそれをやっていたのだと気づいて、「やるべくしてはまったんだな」という感覚があります。

「まだ気づいていないポテンシャルに、いち早く挑みたかった」

——転職活動では、CINC以外も検討されていたのでしょうか。

デジタルマーケティング系の会社をいくつか見ていました。同領域の企業にも応募していましたが、最終的にCINCを選びました。

決め手は主に二つです。一つは条件面がぴったりマッチしたこと。もう一つは、取締役の山地さんと代表の石松さんとの面接での会話の熱量です。描いている世界観や、課題に向き合う思考の仕方が自分と近いと感じました。

中でも大きかったのは、「AIで会社を変えていく」という話が出てきたこと。当時、それを本気で掲げていた会社は実はほとんどなかったんです。そこが一つの大きなポイントでした。

——CINCのデータ・技術力については、どう評価されましたか?

CINCは膨大な数の日本語キーワードのデータを常時収集しており、重要なのはデータ量だけではなくて、そのデータをいかに有効活用するかを考え続けてきたクローラー技術への深い研究の蓄積がある点は、興味深いと思っています。

さらに、月額数十万〜300万円規模のコンサルフィーを受け取れるレベルのSEO会社は日本でも数社しかありません。そこにサーチエンジニアが社内に20名弱いる会社となると、掛け合わせで見ると日本にほぼ存在しない。つまりCINCは、サーチのテクノロジーを日本で最もディープに研究し続けている会社だと思いました。

そして、ここが核心なのですが、サーチ技術の進化版がまさにAI検索です。だからこそ、AI検索への解像度という点で、CINCは他社とは全く違うレベルで持てる。AIは今過渡期にあり、半年後・1年後の変化すら誰もわからない。その中で、技術の行方をいかに高い精度で予測し、対策を打てるかが勝敗を分けていく。それが日本で最もできる状態にある会社がCINCだという直感がありました。

加えて、CINCはSNSデータも大量に取得する環境があります。検索データとSNSデータを組み合わせると、カスタマージャーニーの認知から申し込みに至るまでのインテント(行動を起こすシグナル)をほぼカバーできる。若い層の情報取得はもうSNSが中心ですが、塾で学生と向き合ってきた私はそれを肌感覚として持っていました。

このデータのポテンシャルは、まだほとんど実力が発揮されていなかった。AIが来ることで、大量データの分析精度が劇的に上がる。そのタイミングに、コンサルティング事業の事業責任者として参加できる。良い売り物を早めに手に入れたいというのは営業としての本能ですが、まだそのポテンシャルに気づいていない段階に、先に気づけたという感覚がありました。

AI検索が変えた「ブランディング」——そしてラスト1マイル

——現在、どのような課題を抱えるクライアントと向き合っていますか?

最も分かりやすいのは、AI検索による検索マーケティングの一変です。2025年を通じてGoogleの検索結果画面上部にAI Overviewが表示される頻度が大幅に増えました。これによって各社のWebサイトへの流入が激減しています。自然流入を軸に成長・上場してきた企業にとっては、業績に直結する深刻な事態です。

さらに、流入が落ちた焦りからリスティング広告に投資が集中し、業界全体でCPAが爆上がりしている。各社とも「何をすればいいかわからない」という状態になっています。

——そこに対して、CINCはどんなアプローチをしているのでしょうか。

検索結果から離れた生活者は、どこに向かっているか。その多くがAI検索に流れています。であれば、AI検索上でブランドをきちんと露出させていくことが、最も直接的な対策になります。

ここで大切な概念が「AI Perception(AIによるブランド認識)」です。生成AIはプロンプトに対して、デジタル上の情報を集め、整理し、最も妥当性のある回答を出すのが使命です。そんな生成AIがブランドをどう認識しているかの指標は、早晩デジタル上のブランドそのものを表す指標になりうると思っています。そして、そこに世界で最も資金やテクノロジーがつぎ込まれています。だとすれば、生成AIのブランド認識を改善する活動は、最も効果的なデジタルブランディング活動になる、といっても過言でないと考えています。

私たちがやっていることを「AI検索対策」と言うと、閉じた領域の話のように聞こえるかもしれません。でも本質は、デジタルブランディングを構築していくことです。自社サイトのSEOハックではなく、第三者メディア・PR・SNS・広告、多方面を統合的に動かしていく。それが今求められている対応です。

——大手だけでなく、中小・ベンチャー企業にもチャンスはありますか?

今こそ逆転のチャンスだと本気で思っています。AI検索の本質は、「ロングテールのプロンプトへの対応力」です。

従来のGoogle検索では、調べたいことをキーワードで入れると、最も近いページが返ってくる。でもページに求める答えがなければ、また検索し直して、そのうち諦める。これが今までの限界でした。

AI検索では、気が済むまで深く調べ続けられます。高関与の商材であればあるほど、とことん比較・検討される。その「ラスト1マイル」の質問(選択される一歩手前)まで細かく、深い問いかけに対応できる情報を提供できているかが、勝負の分かれ目になります。

ざっくりとした質問に対しては、AIは大手ブランドを返しやすい。でもラスト1マイルの段階では、ブランドの大小ではなく、情報の細かさと質が問われる。大手もそこはまだ対応できていない会社がほとんどです。そこを早めに積み上げていけば、中小企業でも大手をひっくり返せるタイミングが確実に来る。

もちろん投資判断は経営者次第ですが、先行投資として今動けるかどうかで5年後の差を生む、と私はクライアントにも本気でお伝えしています。

AI時代の強者は「AIコミュニケーションプランナー」

——どのような人材を求めていますか?また、入社後のキャッチアップはどのように行われていますか?

直近1年の採用では、広告代理店でプランニングや営業をされていた方が多いです。最近はアフィリエイト、PR、ソーシャル領域の経験者へのニーズも高まっています。AI検索の影響はアフィリエイトメディアや人事採用の領域にまで及ぶため、横断的な知見を持つ方はとても貴重です。

AI未経験でも問題ありません。毎週の全社ミーティングでの最新知見共有、社内の教育コンテンツ、チャットでのトップコンサルからのリアルタイム発信、チームごとのロープレなど、3ヶ月もあれば、一般水準を大きく超えられると感じています。コンサルタントとエンジニアが隣で働く環境も大きい。出社を奨励して、毎日雑談しながら知識をアップデートし合っています。これは大手代理店ではなかなかできない環境です。

——目指す人材像として「AIコミュニケーションプランナー」という言葉を使われていますね。

従来のコミュニケーションプランナーやマーケターは、「商品・サービス」と「生活者」の間のコミュニケーションを設計する仕事でした。これからはその間に、AIという存在が大きく入り込んでくる。

AIを一つの人格のように捉えると分かりやすい。「AIに好まれるメディアとは何か」「AIに好まれるコンテンツはどういうものか」を理解し、AIと商品・サービスとの間のコミュニケーションを最適化できる人、それがAI時代の強者です。

AIは0から答えを作るのではなく、デジタル上にある情報を参照して回答を生成します。だからこそ、デジタルメディアの構造や各プレイヤーの役割をよく理解している人に、強い優位性があります。

広告・マーケティング業界でキャリアを積んできた方は、すでに「人間に向けたコミュニケーションプランを組む力」を持っています。それにAI理解を掛け合わせれば十分になれる。そのAI理解は、CINCに入れば確実に身につけられる環境があります。

目指すのは「総合広告代理店のAI版」

——最後に、事業・組織としての展望を聞かせてください。

一言で言えば、「AIファーストのコミュニケーションができる組織」を作ることです。イメージは、総合広告代理店のAI版です。

今の総合代理店には、ストラテジックプランニング、メディアプランニング、メディア実行、クリエイティブという機能があります。それぞれの相手は「生活者」です。私たちが目指すのは、その対象をすべて「AI」に塗り替えた組織です。AIストラテジックプランニング、AIメディアプランニング、AIクリエイティブ、そういう機能軸での組織設計です。

「AIを使う組織」ではなく、「AIを対象とするコミュニケーションを設計できる組織」。この差は大きいと思っています。

あわせて、社内での営業とコンサルの連携も大きく変えていきます。これまでのSEO中心の体制では、新規を取ってきた後はコンサルに渡して終わり、という分業がありました。でもAI検索時代は、自社サイト・第三者サイト・PR・SNS・広告と多面的に動かす必要があり、コンサルのSEO能力だけでは足りない。営業がプロデューサーとして案件に最後まで伴走し、次の一手を提案し続ける、そういう体制への転換を、今まさに進めています。

AI検索の領域で、国内ナンバーワンを目指す。市場がまだ形成途上の今こそ、最前線に立てるタイミングです。道筋が見えてきた今、一緒に動いてほしいという気持ちがあります。

転職を検討しているあなたへ(CINCからのメッセージ)

CINCには、数十名規模の開発組織があります。これは他のマーケティング支援会社との最大の違いです。AIマーケティングの手法やサービス自体を、自分たちの手で創り出せる。「使う側」ではなく「作る側」として、最前線に立てる環境がここにあります。

市場はまだ未開拓です。だからこそ、今ここに飛び込んだ人間が、そのまま市場の定義者になれる。広告・マーケティング業界でキャリアを積んできたあなたが持つ「人を動かす力」に、CINCの技術と知見を掛け合わせれば、市場で希少な「AIコミュニケーションプランナー」としてのキャリアを、他の誰よりも早く築ける場所です。

興味をお持ちいただけましたら、アドキャリ転職から是非ご応募ください。

会社名株式会社CINC
上場市場東京証券取引所グロース市場(証券コード: 4378)
代表者代表取締役社長 石松 友典
事業所一覧〒105-0001 東京都港区虎ノ門1丁目21-19 東急虎ノ門ビル6F
設立日2014年4月
事業内容ソリューション事業 アナリティクス事業 M&A仲介事業(株式会社CINC Capital)
従業員数114名(連結、2025年10月31日時点)
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